世界でも珍しい海上空港、半数以上が日本に!

世界でも珍しい海上空港、半数以上が日本に!

ニュース画像 1枚目:上空から見た関西国際空港 (2022年01月搭乗 hachiさん撮影)
© FlyTeam hachiさん
上空から見た関西国際空港 (2022年01月搭乗 hachiさん撮影)

世界には3,600を超える定期便を運航する空港があり、その中の珍しい存在として「海上空港」があります。周りを海で囲まれている空港は9つ、そのうち5つが日本の空港です。この「海上空港」は、造成方法から大きく2種類に分けられます。1つが、長崎空港のように島など従来からの地形を活かした開発、もう1つが関西国際空港に代表される海に人工島を造成する開発があります。日本は人工島を造るケースが多く、これも世界では珍しいことです。今回は、日本の海上空港を紹介します。

ニュース画像 1枚目:国内で最も新しい海上空港、北九州空港 (チーフさん 2015年3月29日撮影)
© FlyTeam チーフさん
国内で最も新しい海上空港、北九州空港 (チーフさん 2015年3月29日撮影)

■海上空港のはしり、伝説のフライトも

世界初の本格的な海上空港として、1975(昭和50)年5月に長崎空港が供用を開始しました。箕島を埋め立て、工期40カ月と決められ、それに間に合う高速施工、造成工事を経て開港しました。周りは海に囲まれ、陸地から離れているため、空港周辺の騒音問題は陸地と比べ抑制できます。轟音が注目されていたコンコルドでも、騒音を気にすることなく受け入れできました。

ニュース画像 2枚目:長崎空港に飛来したコンコルド (サンドバンクさん 1990年9月2日撮影)
© FlyTeam サンドバンクさん
長崎空港に飛来したコンコルド (サンドバンクさん 1990年9月2日撮影)

■世界初の人工島の海上空港

関西国際空港は、世界初の人工島の海上空港として1994年9月に開港。その後、マカオ、香港、仁川と東アジアに続々と海上空港が登場しました。マカオは滑走路のみ海に人工島を建設、香港と仁川は島を一部利用した長崎空港と同様の手法で造られています。同時期に登場した東アジアの各空港と違い、関空は海の中に大規模な人工島を造成したことでも注目される事業でした。この点で、アメリカ土木学会から、20世紀を代表する10大事業として「モニュメント・オブ・ザ・ミレニアム」を受賞しています。

ニュース画像 3枚目:関西国際空港旅客ターミナルの下はジャッキが支える (kakashikansaiさん 2015年9月10日撮影)
© FlyTeam kakashikansaiさん
関西国際空港旅客ターミナルの下はジャッキが支える (kakashikansaiさん 2015年9月10日撮影)

■人工島の海上空港が続々と登場

関空の登場から10年後の2005年2月、中部国際空港(セントレア)が登場します。さらにその1年後に神戸空港、北九州空港が相次いで開港。いずれも人工島で造成され、関空のように海深い場所や海底の地盤の硬さも考慮された事業となりました。人工島のデメリットとしていずれも沈下は避けられないものの、騒音問題を抑制するメリットを生かした運用が特徴となっています。特に、北九州空港は夜間の貨物便受け入れで、同じ県にある福岡空港との違いを出しています。神戸空港も2025年には、国際線の受け入れを含め、一定の方向性が打ち出される予定です。

ニュース画像 4枚目:セントレア (トレロカモミロさん 2014年3月8日撮影)
© FlyTeam トレロカモミロさん
セントレア (トレロカモミロさん 2014年3月8日撮影)

■海上空港のメリットとデメリット

海上空港のメリットは大きく2つで、騒音と拡張性、デメリットは特に「人工島」の灰に地盤沈下が挙げられるでしょう。このうち、沈下は次第に収まっていくと考えられており、まずはその状況から見ていきましょう。

最初に造成された関空の1期島は、造成時から2020年まで計13.43メートル(m)、開港からに限っても3.61m、沈んでいます。その後に造成された、第2滑走路のある2期島でも沈下が確認されています。現在、1期島は年10センチメートル(cm)、2期島は年20cmの沈下です。セントレア・神戸・北九州空港でも沈下は確認されており、年10cm以下です。いずれも建設前の段階から沈下は想定されており、沈下を想定した高さで地面が造られています。

ニュース画像 5枚目:sami_9598さん 2016年5月5日撮影 HS-TGY ボーイング747-4D7 タイ国際航空
© FlyTeam sami_9598さん
sami_9598さん 2016年5月5日撮影 HS-TGY ボーイング747-4D7 タイ国際航空

メリットは大きく2つあり、騒音と拡張性にあるでしょう。騒音問題は陸地にある空港と比べると、海上空港は周辺に隣接する住宅地がなく、さらに24時間運航しやすい周辺環境があります。陸地にある成田国際空港、伊丹空港では離着陸を夜間に制限する「カーフュー」が設けられていますが、海上空港には3空港が近くに位置する神戸以外はありません。轟音が注目されたコンコルドが長崎空港に飛来したことも、周辺に与える騒音が考慮されてのことでしょう。

さらに、人工島による海上空港は敷地拡大の可能性があります。関西国際空港はすでに1期島に加え、2期島の造成で拡張し、滑走路2本で完全24時間化を実現しました。セントレアでも、2本目の滑走路施設に向け、人工島を拡大する計画が始まっています。周りが海に囲まれる日本だからこそ、その広い海を活用する「人工島による海上空港」が多いのかもしれません。

ニュース画像 6枚目:日本トランスオーシャン航空 中部 → 那覇 2021年07月搭乗 写真:機内からの眺め (delawakaさん撮影)
© FlyTeam delawakaさん
日本トランスオーシャン航空 中部 → 那覇 2021年07月搭乗 写真:機内からの眺め (delawakaさん撮影)

なお、人工島による新空港は、2024〜25年ごろ中国で2箇所に開設される計画があります。大連と三亜で、いずれも計画では最大4本の滑走路を設ける計画です。今後、世界でも珍しい海上空港、さらに人工島の空港同士を結ぶ日中間の定期便も、登場するかもしれません。

■世界の海上空港
開港日:空港名
1975年5月1日:長崎空港 (島を活用)
1994年9月4日:関空国際空港 (人工島)
1995年11月9日:マカオ国際空港 (旅客ターミナルは陸地、滑走路は人工島)
1998年7月6日:香港国際空港 (島を活用)
2001年3月29日:仁川国際空港 (島を活用)
2005年2月17日:中部国際空港・セントレア (人工島)
2006年2月16日:神戸空港 (人工島)
2006年3月16日:北九州空港 (人工島)
2015年5月22日:オルドゥ・ギレソン空港 (トルコ・旅客ターミナルは陸地、滑走路は人工島)
<今後の計画>
2022〜23年ごろ:リゼ・アルトビン空港 (トルコ・旅客ターミナルは陸地、滑走路は人工島)
2024〜25年ごろ:金州湾国際空港 (人工島)
2024〜25年ごろ 三亜紅塘湾国際空港 (人工島)

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