全日本空輸(ANA)は2023年10月31日、エアバスA320neoファミリーに搭載される「PW1100G-JM」エンジンの不具合に関わる整備方針と減便計画を発表しました。2024年1月より点検作業を開始。対象機材は、エアバスA320neo型11機とエアバスA321neo型22機の計33機で、ANAが保有するA320neoシリーズの全機です。
「PW1100G-JM」エンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニー(P&W)社によると、製造済みの同エンジンに使用される粉末冶金の製法時における不具合が判明。2015年10月から2021年9月までの期間に製造された600〜700台のエンジンに対して、追加検査が必要となることを9月に発表していました。
◾️整備方針
追加検査は、IHIや三菱重工航空エンジン(MHIAEL)など、P&W社が手配した整備工場で実施されます。ANAが機体からエンジンを取り外し、整備工場で分解。高圧圧縮機と高圧タービンの一部エリアに対して超音波による非破壊検査を実施し、不具合の有無を確認します。不具合があった場合は、部品交換を行い再度エンジンを組み立てる作業です。これにかかる期間は、1台あたり250~300日になる見通しが示されており、ANAの運航計画に大きな影響を及ぼします。
◾️減便計画
エンジンを取り外した機体は長期間非稼働となるため、2024年1月10日(水)から3月30日(土)において、国内線・国際線の一部路線を減便。当初の計画便数に対する減便数は、1日あたり約30便です。減便されるのは、国内線が2,267便(20路線)、国際線が145便(2路線)の計2,412便(22路線)に及び、羽田/大阪(伊丹)線・福岡線や羽田/ソウル(金浦)線など、同日・同路線に変更可能な便がある路線を中心に決定したとしています。減便対象となる一部路線では、スターフライヤーとソラシドエアがANAとのコードシェア便として、臨時便を134便運航する計画を立てています。
影響は2024年3月31日(日)以降の夏ダイヤも続き、減便計画は1月末に改めて発表する予定です。
「PW1100G-JM」エンジンは、2014年に型式証明を取得した日本・アメリカ・ドイツ、3か国の5社による国際共同開発エンジンです。国内では全日本空輸(ANA)が保有する、A320neoおよびA321neoに搭載。世界では200機以上を保有するインドのインディゴなどでも多く採用されており、P&Wによると2026年にかけて350機程度の航空機が長期間非稼働となると発表しています。一方で、国内のスターフライヤー、ピーチ、ジェットスター・ジャパンや、海外のルフトハンザドイツ航空などは、CFMインターナショナル製「LEAP-1A」エンジンを搭載しているため、影響を受けません。